活動便り

教育フォーラム

教育フォーラム「これからの日本の教育―物事の根本原理を考える力と習慣」

これからの日本の教育―物事の根本原理を考える力と習慣―
畑田耕一、桝田定子、関谷洋子、戸部義人、北村公一、松山辰男

本文の著者らは、豊中ロータリークラブの青少年奉仕活動の一環として、2001 年より、豊中市の小学校・中学校を中心に、会員の専門に関する主題で出前授業を行ってきました。その一つの目標は、生徒に学校の授業で学習する内容が実社会でどのように有効に活用されているのかを学習させることで、学校の授業と実社会の生活との関わり合いを認識させて、授業での学習意欲を一層高め、学校教育の効果向上の支援をすることです。例えば、高分子科学の専門家が、プラスチック製品、ゴム、繊維などいろいろな高分子製品を教室に持ち込んで、それらが日常の生活にいかに役立っているかというお話をする類です。そんな中で、この高分子科学の授業では、高分子は細長い紐の様な分子であるという高分子科学の根本を先ず話して置かないと、単に面白い物を一杯見たというだけに終わってしまいかねないことが分かりました。そこで、よく考えて見ると、日本では、どのような分野でも、物事の根本を考えるという姿勢・習慣があまりないのです。それは、「生とは何か」、「死とは何か」というような人の生活の根本に関わる問題についての話し合いをしてみると、よく分かります。学校の先生も教科書の内容を学習させるのに精一杯で、根本原理にまでは手が回らないのです。これまでの日本の教育は、生徒に知識を習得させることを主流とし、物事の根本原理を先生と生徒が一緒になって一所懸命考える教育を怠ってきました。これでは、これから先、日本が、いろいろな分野で世界をリードする使命を果たせません。これが、専門家が出前授業を通して、自己の分野の根本原理を子供たちに語ることで、先生方の授業を側面から支えねばと、著者らが思うに至った理由です。本稿では、根本原理の教育に関わるいくつかの話題について述べます。